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いろは歌
「伊呂波歌(いろはうた)」(十世紀後半成立)
色は匂えど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見し酔ひもせず |
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす |
「天地の詞(あめつちのうた)」(平安時代初期成立)
天、地、星、空、
山、川、峰、谷、 雲、霧、室、苔、 人、犬、上、末、 硫黄、猿、生ふせよ、 榎の枝を、馴れ居て。 |
あめ、つち、ほし、そら、
やま、かは、みね、たに、 くも、きり、むろ、こけ、 ひと、いぬ、うへ、すゑ、 ゆわ、さる、おふせよ、 え(ア行)のえ(ヤ行)を、なれゐて。 |
細井広沢 作 「君臣歌(きみのまくらうた,くんしんか)」
君臣
親子夫婦に兄弟群れぬ 井鑿り田植へて末繁る 天地栄ゆ 世よ侘びそ 舟の櫓縄 |
きみのまくら
おやこいもせに えとむれぬ ゐほりたうへて すゑしける あめつちさかゆ よよわひそ ふねのろはな |
本居宣長 作 「雨降歌(あめふれうた)」
雨降れば 井堰を越ゆる
水分けて 安く諸 下り立ち植ゑし 群苗 その稲よ 真穂に栄えぬ |
あめふれは ゐせきをこゆる
みつわけて やすくもろひと おりたちうゑし むらなへ そのいねよ まほにさかえぬ |
谷川士清 作 「天地歌(あめつちうた)」
天地分き 神さふる
日本成りて 礼代を 大御嘗齋場 占設けぬ これぞ絶えせぬ 末幾世 |
あめつちわき かみさふる
ひのもとなりて ゐやしろを おほへゆには うらまけぬ これそたえせぬ すゑいくよ |
坂本百次郎 作 「鳥啼歌(とりなくうた)」(1903年)
鳥啼く声す 夢覚せ
見よ明け渡る 東を 空色栄えて 沖つ辺に 帆船群れ居ぬ 靄の中 |
とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんがしを そらいろはえて おきつべに ほふねむれゐぬ もやのうち |
堀田六林 作
春ごろ植ゑし 相生の
根松行く方 にほふなり 齢を末や 重ぬらむ 君も千歳ぞ めでたけれ |
はるころうゑし あいおゐの
ねまつゆくえ にほふなり よわひをすへや かさぬらむ きみもちとせそ めてたけれ |
「たゐに歌」(十世期末成立)
田居に出で 菜摘む我をぞ
君召すと 漁り追ひゆく 山城の うち酔へる子ら 藻葉乾せよ え舟繋けぬ |
たゐにいて なつむわれをそ
きみめすと あさりおひゆく やましろの うちゑへるこら もはほせよえ ふねかけぬ |
西浦紫峰作「おえど歌」(1952年)
お江戸街唄 風そよろ
青柳けぶり ほんに澄む 三味の音締めへ 燕も 恋ゆゑ濡れて ゐるわいな |
おえとまちうた かせそよろ
あおやきけふり ほんにすむ さみのねしめへ つはくらも こひゆゑぬれて ゐるわいな |
文芸春秋デラックス1974年12月号より
乙女花摘む 野辺見えて
我待ち居たる 夕風よ 鴬来けん 大空に 音色も優し 声ありぬ |
をとめはなつむ のへみえて
われまちゐたる ゆふかせよ うくひすきけん おほそらに ねいろもやさし こゑありぬ |
「ひふみ歌」 先頭部分は「一二三四五六七八九十百千」
ひふみよいむなやこともち ろらねしきる ゆゐつわぬ
そをたはくめかうおえに さりへて のます あせゑほれけ ん |
「五十音順」 現在もっともよく使われているもの
あいうえお かきくけこ
さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ わゐ ゑを ん |
井堰稲植え 刈り収む
負う穂も揃い 土肥えぬ 稀に見る夢 安らけく あな楽しよと 我は経てん |
ゐせきいねうゑ かりをさむ
おふほもそろい つちこえぬ まれにみるゆめ やすらけく あなたのしよと わはへてん |
細山川の 末を見よ
千船群居る 広瀬あり 夢起こたせで 業とけん いつにし消えぬ 名もうべく |
ほそやまかはの すゑをみよ
ちふねむれゐる ひろせあり ゆめおこたせで わざとけん いつにしきえぬ なもうべく |
入力:河原一敏
初出:1999年2月21日
更新:1999年3月4日
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